熊本家庭裁判所 昭和47年(家イ)339号 審判 1972年7月19日
申立人 小坂和子(仮名)
相手方 小坂直義(仮名)
主文
申立人と相手方とを離婚する。
相手方は申立人に対し金六万円を支払え。
理由
(一) 申立人は主文一項同旨および「相手方は申立人に対し慰藉料金五〇万円を支払え。」との調停を求めたところ調停委員会の調停において離婚の点は当事者間に異論がなかつたけれども慰藉料の点で相手方が「申立人から金槌で殴られたから慰藉料は支払えない」と主張し調停が成立しなかつた。
(二) 当庁調査官酒井隆の調査報告書によると「申立人は勝気な性格で相手方は内気な性格であつて申立人と相手方の婚姻関係は和合の余地がない程に破綻していること」が認められる。ところで性格の不一致そのものについては(婚姻破綻の)有責性の問題は生じないとの見解(判例評論六一号二九頁)があるけれども、最も緊密な人的結合体である婚姻関係にあつては互いに各自の性格を適宜に抑制しあう努力が必要であるから、性格不一致による婚姻破綻の場合には夫婦の双方がその点の努力を怠つたものとして各自に婚姻破綻の責任があり、したがつて相手方は申立人に対し離婚による慰藉料支払の責任がある。なお前記報告書中「申立人と相手方の夫婦不和の原因として相手方が賭事にこりることもある」旨の申立人の供述記載部分は該供述に反する相手方および青木伸雄の供述記載部分にてらし採用できず、また前記報告書によると昭和四七年五月二四日、調停時における相手方主張のとおり相手方が申立人から金槌で殴られたことが認められるが前記報告書によると該認定事実は申立人と相手方の婚姻が性格不一致により破綻した以後におこつたものであり、したがつて相手方の申立人に対する離婚による慰藉料支払責任を左右するものではない。
(三) 前記報告書および記録添付の戸籍謄本を総合すると「申立人と相手方は昭和四五年三月から内縁同居し同四七年一月二七日に婚姻届出をし同年五月九日以降別居していて内縁期間を含め申立人と相手方の夫婦としての同居期間は二年余りであり、その間相手方は○○卸商店の店員として毎月二万円余の収入を得ていながら昭和四七年一月までは申立人に生活費を渡さず(註―前記報告書中「相手方が申立人に生活費を渡さなかつたのは昭和四六年六月までである」旨の相手方の供述記載部分は申立人の供述記載部分にてらし採用できない)、そのため昭和四七年一月までは申立人が勤務先○○から得る月給二万五〇〇〇円で二人の生活費をまかなつていたこと」が認められ、該認定事実と申立人にも婚姻破綻の責任があることをしん酎して相手方が申立人に支払うべき離婚による慰藉料の額を金六万円と算定する。
(四) よつて家事審判法二四条により主文のとおり審判する。
(家事審判官 田尻惟敏)